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虚ろな紅い竜
2008 / 02 / 19 ( Tue ) 水晶にも似たきらめきを眺めながら、ミラ・アイオーニオンは伸びをした。 (※単に竜化形態の設定を固めるためのもの。時間軸が今一ハッキリしないです) 続きを読む
大地が、ほんのりと暖かい。 暖かいが……それは、例えば日差しがもたらすぬくもりとは、少し違った。 柔らかな――この身体に馴染んで久しく、温かい――力の胎動こそが、今この場に溢れているモノだ。 ――…………―― 変化は何の前触れも無く、ごく自然に、穏やかに過ぎ去って行った。 鮮やかな朝焼けの色に染まった瞳を、彼女はゆっくりと瞬いた。 無論、何もせずに自分の瞳の色を確認できたわけではない。 わざわざグリモアの側まで運んできた姿見を覗いて、そこで初めて己の瞳を見た。 ――上等じゃ無いか―― 普段よりも色のよくなった唇の、端だけを僅かに吊り上げ、声を出さずに彼女は笑った。 もともとの目つきは、お世辞にもいいとは言えないと思っていた。 つり目でも無し、三白眼でもやぶにらみでもないのだが、それでも常に不機嫌そうだった目元。 それが今はどうだろうか、日ごろの顔が可愛く見えるほどに凶悪な面構えをしている。 やぶにらみでこそないものの、鋭い形と三白眼。 それが今は笑みの形に細められていて、そこには可愛げなど見当たらない。 少なくとも、彼女自身には。 髪も、瞳と同じ曙の色をしていた。 かなり強い癖を帯びたらしく、大きくうねりながら腿まで伸びている。 炎のようだと形容するのは、些か自惚れが過ぎるのだろうか? その合間から覗くものも、また強烈だった。 額には、アイ・アゲートのようなグラデーションを持った、緑色の楕円の石。 耳はエルフのようだし、ご丁寧に角まで生えている。 一つ一つに触れて確認していくうち、耐え切れなくなって彼女は吹き出した。 「っく――ははっ……」 その声までもが、以前に増して作り物めいて、中性的だった。 一体何処まで、こうも大げさになっているのだろう? 彼女は数歩下がって、全身を鏡の――正確には視界の――中に収めた。 洋服は、真っ赤なローブだった。その下は黒いシャツになっているらしい。 首にはごつい皮製の輪がついていて、鎖まで巻きついている。 ローブの胴部分をまとめているベルト――宝石がちりばめられている――もクロスしていて、一見すると拘束具か何かのようだった。 が、これらは何処に繋がっているでもない。 背中の、羽。 こうもりの羽を捻り上げたような、歪んだ赤い羽が六対十二枚。 ローブの何処からか伸びている黒い鎖が、全ての羽に絡みついていた。 完全に絡め取られているわけではなく、鎖がジャラジャラと派手な音を立てる程度には動かせたが。 しかしコレをどのように使って空を飛ぶのか、本人にも見当がつかなかった。 いや、この状態ならば羽など無くても飛べるのだろうが。 だとすれば、飾りか。 飾り。 ――ああ。一体、私と言う人間は、どこまで―― 「大げさがすぎて、虚仮威しにもなってないぞ」 呟いて彼女は、鏡の中の自分に、嘲笑した。 私は、私。 常日頃から言っている言葉だが、それでもこの「私」は私とかけ離れているではないか。 現れる「本質」とやらが、そもそも虚構に塗り固められたような形をしているではないか。 そもそも、その「本質」を現すことを恐れた結果が、これではあるまいな? まさか―― ……………………。 たっぷり数分、胸中で自問してから、彼女はまた笑った。 今度は、満足げに。 「可愛げのない」顔が、それでも少しだけ穏やかに、歪む。 次のまばたきが終わるよりも先に、彼女はいつもと変わらぬ姿に戻っていた。 何事も無かったかのように姿見を抱えると、帰路に着く。 「……宝石……引っぺがしても消えるんだよなぁ……」 いつもと同じように、少しずれた言葉を零しながら、足を進める。 穏やかな力の波も、柔らかなぬくもりも、透明な煌めきも遠ざかって、自然なだけの風が、肌に触れた。 【あとがきという名の言い訳】 言い回しに関していえば、習作です。 前回の過去話で余韻と文体の同居に関してスランプ発生したので。 内容に関していえば、自己満足です。ドラゴンBUどうしましょう。 ある意味中二病全開な外見ですが、それでいいんです。 テーマ「虚仮威し」。 ミラですから。 オマケ。 気分によっては年齢が退行します。10歳以下くらいまで。 本人はそれを猛烈に嫌がるので、不意の変身は嫌いです。 そういえば今からDBU頼んでも日の目を見る機会はあるんでしょうか。 PR テーマ:<%topentry_thread_title> - ジャンル:<%topentry_community_janrename> |
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