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命のあふれる浮島があった。
風に飛ばされることでしか他の土地には行けない、周囲と隔絶された孤島。
そこに住む者達は、皆一様に同じ色をしていた。
褐色の目、褐色の髪、肌さえもエンジェルには珍しい褐色。翼の白も心持ち落ち着いていた。
彼らがどれほどの昔からその島に居たのかは分からない。
ただ確実なのは、寿命の長い住人たちが「先祖代々の自分たちの色」を意識するだけの時間は過ぎていたということだけだ。
平和な浮島だった。
大地の色にも似た住人たちは皆穏やかで、諍いも滅多に無い。
そもそも、外敵が居なければ生き物の群れは平和なのだろう。
何らかの共通事項があって、それによって結束しているのなら、尚更。
豊かな土の色をした平和は、とてもとても長く続いていた。
例え過去に争いがあったのだとしても、それを葬り去ってしまう程度には。
大地に 向かって
光は 隕ちた
大きな穴を穿つように
深い深い凍てた所へ
地母神のあなに
白い白い子供が生まれた。
白子、ではない。肌は白いが血管が見えているわけでは無いし、髪は金がかかっている。
瞳は柘榴石のような色をしていたが瞳孔は黒く、白目が透けていたりはしない。
恐らくは、単なる先祖返だ。別段に奇妙なことではない。
今でこそ外界とのかかわりの無い浮島とはいえ、そこに住人が居るのだから、嘗ては外との関わりがあったのだろう。
遠い昔には、流れ着いたものもあったのだろう。
忘れ去られた古い血が蘇ることは、別に珍しいことでもない。科学的にありえることなのだ。
しかし、だだそれだけの子供を呼ぶ名前は、存在しなかった。
『ανωμαλοσ(アノマロス)』
『αηδιαστικοσ(アイジアスティコス)』
『διαφαχια(ジアファニス)』
生き延びたということは、少なくとも育ててくれたものは居たのだろう。
それでも、白い子供は蔑称だけをその背に受けた。
慈しみや愛しさを込めて彼女を呼ぶための名前は、その島に存在しなかった。
言い訳と化した後書き
文体をどうするべきか最後まで迷った
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