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隕ちた光 1
2008 / 02 / 11 ( Mon )

 誰も知らない昔の話が

 古びた手帳に綴られる


(昔話)


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 命のあふれる浮島があった。
 風に飛ばされることでしか他の土地には行けない、周囲と隔絶された孤島。
 そこに住む者達は、皆一様に同じ色をしていた。
 褐色の目、褐色の髪、肌さえもエンジェルには珍しい褐色。翼の白も心持ち落ち着いていた。
 彼らがどれほどの昔からその島に居たのかは分からない。
 ただ確実なのは、寿命の長い住人たちが「先祖代々の自分たちの色」を意識するだけの時間は過ぎていたということだけだ。

 平和な浮島だった。
 大地の色にも似た住人たちは皆穏やかで、諍いも滅多に無い。
 そもそも、外敵が居なければ生き物の群れは平和なのだろう。
 何らかの共通事項があって、それによって結束しているのなら、尚更。
 豊かな土の色をした平和は、とてもとても長く続いていた。
 例え過去に争いがあったのだとしても、それを葬り去ってしまう程度には。


 大地に 向かって
 光は 隕ちた
 大きな穴を穿つように
 深い深い凍てた所へ
 地母神のあなに

 
 白い白い子供が生まれた。
 白子、ではない。肌は白いが血管が見えているわけでは無いし、髪は金がかかっている。
 瞳は柘榴石のような色をしていたが瞳孔は黒く、白目が透けていたりはしない。
 恐らくは、単なる先祖返だ。別段に奇妙なことではない。
 今でこそ外界とのかかわりの無い浮島とはいえ、そこに住人が居るのだから、嘗ては外との関わりがあったのだろう。
 遠い昔には、流れ着いたものもあったのだろう。
 忘れ去られた古い血が蘇ることは、別に珍しいことでもない。科学的にありえることなのだ。
 しかし、だだそれだけの子供を呼ぶ名前は、存在しなかった。

 『ανωμαλοσ(アノマロス)』
 『αηδιαστικοσ(アイジアスティコス)』
 『διαφαχια(ジアファニス)』

 生き延びたということは、少なくとも育ててくれたものは居たのだろう。
 それでも、白い子供は蔑称だけをその背に受けた。
 慈しみや愛しさを込めて彼女を呼ぶための名前は、その島に存在しなかった。




言い訳と化した後書き
 文体をどうするべきか最後まで迷った

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16:10:55 | 紡ギ | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
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